「調理はできる」と聞いていたのに、消防車が来た日
グループホームに消防車が来た
グループホームの火災報知器が鳴りました。
私が駆けつけると、消防車が2〜3台来ていました。
幸い火災ではありませんでした。
何があったのでしょうか。
その日は、長い入院生活を終えた利用者さんが退院した日でした。
その方は焼肉を食べたかったそうです。
ところが、買ってきた肉を大きな塊のまま冷凍し、凍ったままフライパンで焼こうとしたのです。
大量の湯気が上がり、その際に火災報知器が鳴りました。
退院したら、自分の好きなものを食べたい。
その気持ちはよく分かります。
しかし、この出来事には、私たち支援者が考えなければならない問題がありました。
「調理ができる」という評価
実は、病院のリハビリテーション科からは「調理はできる」と評価されていました。
私たちも、その評価を聞いて安心していました。
ところが、後から分かったことがあります。
病院の作業療法室で調理した経験はあっても、実際の生活の場で調理した経験はなかったのです。
作業療法室で調理ができることと、一人で生活しながら食事を準備できること。
似ているようで、違います。
食材を買う。保存する。必要な量を取り出す。調理する。後片づけをする。
実際の暮らしでは、こうした一連の行為が必要になります。
「調理ができる」と「暮らしの中で調理できる」は、必ずしも同じではありません。
これは、作業療法士である私自身にとっても、考えさせられる出来事でした。

私たちが変えたこと
この出来事の後、私たちは肉の保存方法を変えました。
購入した肉を、職員が小分けにして冷凍することにしたのです。
その後、同じようなことで消防車が来ることはありませんでした。
ここで大切なのは、本人に調理をさせないという発想ではありません。
どの工程で困っているのか。
どこを手伝えば、自分で調理する生活を続けられるのか。
そこを考えることだと思います。
もちろん、火災などの危険があれば、安全を確保する必要があります。
しかし、安全のために何もかも職員が代わって行えば、本人が自分で暮らす機会まで減らしてしまいます。

評価するのは、訓練室だけではない
作業療法では、さまざまな生活行為を評価します。
ただ、訓練室でできたことが、そのまま自宅やグループホームでできるとは限りません。
環境も、道具も、生活の流れも違います。
だからこそ、退院後の生活を実際に見て、必要な支援を考えることが重要なのだと思います。
「できるか、できないか」だけでなく、「どうすれば、その人の暮らしの中でできるか」。
消防車が来たあの日のことを、私は今でも覚えています。
